オーディオ・ベースマン見たり聴いたり トライオード TRZ-300W その①・・300B真空管に期待するものは…。

トライオード TRIODE  TRZ-300W  定価48万円。同社の銘品、自分で組み立ても出来たプリメインアンプ VP-300BDの後継機種だけど…。ベースマンに常設、いつでも聴けます。

店主・細川さんがいう。「藤井さん、そのうち、この300の良さがわかりますよ」と僕にいう。でも、受け入れられない。個人的には、この音は受け入れられない。今のところは…。

明るめの音調。中高域から下の帯域の解像力が高く、ダンピングを利かせて、音の輪郭をシャープに隈取るコントラストの良さ。SN比も高く濁りがすくない。強化された電源部の影響なのか、エネルギー感のある骨格の太いサウンド。高レスポンス、ハイスピード、音が躍動する。「海外ではロック」というトライオード社長の言葉が頭をよぎる。残念なことに、300B真空管の持つ繊細で美しい中間帯域といった音色は、期待できない。躍動的演出が過ぎる気もする。

300B真空管を使った音の表現。どのような表現を期待するのだろうか?。僕は、絶対的なオーディオ性能より「そこはかとない情感」。音楽を楽しむ者の聴覚を刺激するものではなく、「琴線に触れるもの」

オーディオによる音楽再生。実際の演奏とは、「似て非なるもの」とも言える。その「似て非なるもの」だが、その「非なるもの」をもって最大の効果を発揮する「芸」が日本にある。歌舞伎。その「女方(おんながた)」。それは「女性の役あるいはそれを勤める役者を指し、現実の女性の模倣ではなく、芸の上で創り上げられた理想の女性象」と言われる(歌舞伎用語案内より)。「女方」を観ると、初めは異様な物を見る思いだが、見慣れ、その台詞(せりふ)を聴くと女性を感じざるを得ない。楚々としたただずまい、たおやかな所作、清楚さと妖艶さの入り混じる目くばせ。そのゆったりとした発声。「よよ」とよろめく立ち振る舞い、指先から足の運びまで何百年にも亘(わた)り練り上げ、創り込まれた技巧美を感じる。その創り込まれた表現を現代300B真空管アンプに期待するのですけど…。

TZR-300B。オーディオ的性能とは違った「琴線に触れもの」があるかどうか。もう一度、じっくり聴いてみよう。受け入れられるものがあるのかもしれない。