オーディオ・ベースマン見たり聴いたり ダイヤトーン DS-20000・・語(かた)らないSP。

オーディオ・ベースマン見たり聴いたり ダイヤトーン DS-20000・・語(かた)らないSP。

ダイヤトーン DIYTON DS-20000。中古品28万円。その音質の印象は、ジャパン・トラディショナル。偏(かたよ)らないおかずの「幕の内弁当」、どこを切っても金太郎の顔の「金太郎アメ」的。「真面目な音だ」と店主。

重量感溢れる現代では得難い外観。日本経済華やかし頃のジャパン・メイド。

当時のカタログによると、35Hzから80.000Hzまでの帯域性能。詰まったかんじはないが、帯域の広さは感じられない。澄み切った、透明感のあるSN比も同様。高域は、繊細に伸び切る表現ではない。低域は、締まり切った動的力感はない。 高レスポンス、ハイスピード ではない。この辺が、二十数年前のスピーカー(SP)の限界かもしれない。しかし、筐体(きょうたい)(注)、ユニットに吟味を重ねた結果、歪み、くすみ、ボケといった音の印象を曖昧にする要素は排除され、一音一音、丁寧に、実直に解像。「ハッキリ」とした現代的な高解像度とは、一線を画(かく)す。再生される帯域全体の響きを抑え、エネルギーバランスを中間帯域を中心に展開し、その帯域の濃さを前面に打ち出す。高域、低域を控え目にしていため、派手な音は、出ない。やや仄暗く、落ち着いたトーン。

所作を整え、居住まい、襟元(えりもと)を正し、和室に正座して、音楽に向き合う。正に、日本のSP。現代の過剰表現のSPと聴き比べてみると「つまらない」かもしれない。雄弁に語らず、寡黙。音を声高に出すのではなく、粛々(しゅくしゅく)と流す。日本人の性格「律儀、勤勉、地味」という言葉を音質に変換するとこのDS-2000が再生する音になるような気がする。

(注)筐体は、北米シトカ地方のシトカスプルース(ピアノの響板に使われる)、アメリカンチェリーの突き板材、ハードメイプルの接合用角部材。そして、日本伝統の漆塗りのフィニッシング。今では、これらの素材を使ってSPが、制作されることはないだろう。