オーディオ・ベースマン見たり聴いたり アキュフェーズ C-290V その⑤・・歌う船。

オーディオ・ベースマン見たり聴いたり アキュフェーズ C-290V その⑤・・歌う船。

私の所有者、チェロが歌うように鳴るのが好き。朗々と高々と誇らしげに響き渡るチェロの音より、しみじみと慎み深く、品よく響くフルニエのチェロの音が好み。「フルニエのチェロが歌うかどうか」。そこが、評価の分かれ道でした。私も彼(C-3900)も歌います。ただ、音色がちがいますけど。

ロンドン不滅の名盤1500。ブラームス・チェロ・ソナタ・一番・二番。フルニエとバックハウス。1955年・モノラル録音。「歌う船」(アン・マキャフリー)。

暫(しば)し、C-3900を聴いて、店主・細川さんが仰いました。「(私に比べ)C-3900は、四重奏では、第一ヴァイオリンが、曲をリードしているのが分かる。チェロのザクザク感(リズム感)もいい。楽団全体のスピード感、一体感は上。(そういう演奏の)気配は、C-3900(の方)が(よく)気配を感じる。音の広がり、ヴァイオリンの胴の中で音が鳴っている、周りに漂っている時、(消えないうちに、弾かれた)次の音が聴こえる。(そのため)採れたての食材のような新鮮な音がする。(写真のレコード)古い録音だけど、その中に新しい発見がある(ように新鮮に聴こえる)。(私C-290Vでは)1955年の録音に聴こえる(古き良き録音の意味)」。「もう一度、C-290Vを聴きましょう」といい、接続を変えました。私は、歌い出しました。「これは、これで、いいなぁ。(チェロ、ピアノなどの楽器、ボーカルの)100~400㎐(の帯域)に厚みがある。この部分を上手く盛っているため、暖かみがある。メロディも『フッと』勢いよく出てくる。そのような音造り。ただ、奏者が弱音で演奏すると(演奏のメリハリが効かず、一本調子の)普通(の演奏)に聴こえてしまう。(3900は、そのようなことはなく)音の純度は、C-3900が高い。3900は、中間帯域が薄く、100~400Hzを盛り上げなく、低域は、50Hz以下も出ている。あくまでもフラット。音色は、3900が【やや明るめ】で、290Vが【やや仄暗い】。が、それは、あくまで3900がフラットだからでしょう」。「(C-3900の)性能云々をちょっと一聴しただけで、”ああだ、こうだ”とは言われたくない。(音色などは、フラットな)3900を(スピーカー、ケーブル、セッティングなどを駆使して)自分の好みの音色に鳴らせばいいだけの話です」。

私の所有者。私の方が、慎み深く、素朴、気品のあるフルニエのチェロに聴こえたようです。

オーディオ ベースマン、店を開き、今年で10年になる。比較試聴の合間に休息がてらに訊ねた。「細川さん、店をやっていて、一番楽しい事、もしくは、これまで、やってこれたのは、お客さんの好みを訊ね、細川さんが、お客さんに勧めた製品、それをお客さんが、購入して、自宅で聴いて、『凄(すご)く、いいよ!!』と言われることがあるからですね?」。ニコニコしながら「そうです」と店主。「でも、今回みたく、オススメした製品が良すぎて、お客さんに合いすぎてかな?、比較して買い替えず、商機を逃してしまうこともありますネ(笑)」というと、また、ニコニコして「そうです」。

オーディオ ベースマン。これからの10年は、予約営業を中心に、お客様にじっくり聴いていただき、納得されて、購入して頂くスタイルを継続するようです。