オーディオ・ベースマン見たり聴いたり あらえびす記念館ホール・・歪みなく、スッキリとした簡素な音質空間。

オーディオ・ベースマン見たり聴いたり あらえびす記念館ホール・・歪みなく、スッキリとした簡素な音質空間。

ホール内、人の会話の声が、「爽(さわ)やかに明快」に聴こえる。江戸時代の土蔵を連想させる白壁。それを梁(はり)とともに上方に伸ばし三角形の頂点とする逆船形の天井。演奏台に向かって左右の壁は、障子(しょうじ)貼り。障子は和紙なのか、樹脂(プラスチック)の不織布なのか。日本家屋を連想させ室内に落ち着きをもたらす。障子の上には斜め上向きに傾斜が付けられた板。庇(ひさし)をイメージしたものか。一方、室内を支えるコンクリート剥き出し、打ちっぱなしの無機質な柱が並ぶ。慎(つつ)ましく簡潔に落ち着いた白い空間。ここがあらえびす記念館の音楽ホール。

十分な高さがあり、室内という圧迫感皆無。

ここは、演奏会用のホール。やや、響きを抑え、歪みなく、くすみなく、曇りなく「ハッキリ、クッキリ、スッキリ」とした音質の記念館ホール。トランジェント(高音のたちあがりの速さ)高く、煌(きら)びやかに伸び、炸裂した花火の燐火(りんか)が「キラキラ✨」と消えゆくような高域表現、肉づきのある厚いふくよかな中間表現、陰影コントラストの強い、音の輪郭が「グリッ」とした低域表現はない。少々、オーディオ的要素を求める方には、物足りない。このホールをオーディオ的に言えば、やや高い音からやや低い音、15.000Hzから300Hzぐらいまでの音を「ハッキリ、クッキリ、スッキリ」とさせた印象。「和」を意識した(?)障子貼り、板の庇(ひさし)、天井に向かって伸びる梁が形作る三角錐の構造がもたらす影響か?。音が反響するコンクリートの柱、音を弱める障子は、低音に如何なる影響を与えているのか。また、上斜め上方に角度を付けられた庇の板は、天井の三角の頂点に向けて高域を反射させその残響成分を抑えているのだろうか?。再生時の音量、㏈は、46㏈~28㏈まで。スピーカーから2メートルの位置、最奥の10メートルほどの位置でも「音の輪郭が痩せない」。興味は尽きない。

オーディオ的に求められる要素でベースマンの店と比べると面白い。ベースマンは、広帯域で、高解像度、エネルギー密度が高く、低域は力強く、高域は伸びやか。高コントラストで高解度基調の写実調。音質を強調した「デジタル写真」のような出来が、ちょっと、作為的。一方、あらえびすのホール。上記の要素では、落ちるが、高SN比、低歪み、曇りなく、音楽を聴き続けていると自然にハーモナイズされるかろやかな音の流れ。極めて出来の良い「水彩画」、自然な音質だ。

演奏会場に入るといつも思うが、大きい会場は静かだ。つまり、高SN比だ。それを、ベースマンの店、あらえびすのホールを比べて、実感した。

以前、ふんわり湧水さん(ネームを間違っていたらすいません)から、「オーディオ・ベースマン見たり聴いたり アキュフェーズ P-6100・・東芝のMOS-FETがもたらすものは?」に投稿を頂いた。岩手県民会館の音に関する投稿でした。それが、URL移行時に消えてしまった。それは、貴重な投稿だったので、ここに僕の記憶で再現します。内容は、5月30日、岩手県民会館大ホールにて行われた「佐渡 裕/反田 恭平 新日本フィルハーモニー交響楽団 50周年記念演奏会」の僕の印象に対するものです。『~私は、一階の前の方の真ん中で聴いてました。以前から、県民会館の音は良くないと思ってました。今回も同様です。ですが、反田恭平さんのピアノはこれまでで聴いた中で一番、演奏も音もよく聴こえました。昔、‘ダリルホール&ジョン・オーツ’が県民会館に来た時、音が良く、驚きました。よほど腕のいいPAが調整したんでしょうね~』といった感じでした。記憶違いもあるかでしょうが、大筋は合っていると思います。僕も三年ほど前に、「ジェフ・ベック」のコンサート。県民会館の二階の一番前で聴きました。その時、ふんわり湧水さんと同様、「音がいい」のにはビックリ。こうなってくると県民会館はクラシック向けでなく、PAで音を纏(まと)め上げるロック、ポップス、ジャズ向けなのかなぁ?。