オーディオ・ベースマン 見たり聴いたり 松岡直也 「夏の旅」・・・高密度の低音が日本の蒸し暑さを表現

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松岡直也さんの「夏の旅」。こんなに音が良いなんて!。35年ほど前に「九月の風」に感動、勢いで購入したが、その頃の自分を褒めてやりたい。また、手放さずに置いておいてよかった。

故・松岡直也さんの「夏の旅」。「夏」を聴くなら、音質、演奏ともこのレコードが最高。

奥が深く、力強く引き締められ、躍動感にあふれる低音。カラフルな質感ながら乾いてキレのある中高域は、最高域まで透明。高密度の低音は、日本の蒸し暑さを表現、乾いて透明な中高域が、物寂しさを演出する。アルバム全体を通して、緩急をつけたスピード、ぶ厚いパワー、SN比(静けさ)に優れた音の背景、余白が過ぎ去った夏の一日を思い出させる。

一番の聴きどころは、第一曲目「日傘の貴婦人」の終わり、左手上空から、ジェット機が飛来、かすかなエンジン音を響かせる。砂利道を踏みしめ右手から登場したボンネットバスが停留所に停車。ドアが開き、乗客が乗降すると、バスのアイドリング音とともにドアの開閉音が聞こえる。バスが発進、立ち去るバスのタイヤ音、排気音とともにジェット機も右手上空に消える。

まさに、ジャケット写真の世界。レコード針を落としたその瞬間、聴き手は、過ぎ去った夏に立ち返る。

使用機材 アキュフェーズ C-3850、同A-200 同C-37、PS-1220、ソリッド・マシーン・スモール(アーム・オルトフォンRS-212D) AT-ART9 B&W signature Diamondなど。