オーディオ・ベースマン見たり聴いたり アキュフェーズ試聴会 その⑦・・低音が空振りする⁉。

オーディオ・ベースマン見たり聴いたり アキュフェーズ試聴会 その⑦・・低音が空振りする⁉。

猪熊隆也・常務取締役。アキュフェーズ新製品の試作機の音質をいの一番にチェック。さぞかし「重箱の隅をつつく」ような細かな物言いを試作機につけるのかと思きや、意外にアッサリしたもの。出来上がった試作機の音を聴いて、「低域がしっかり鳴っているか?。(帯域全体の音の)バランスが取れているか?を重視する」。聴いて「リズムが鳴ってないベースだよね。ベースが来ないね(上手く聴こえない)」。で、改善された機種を聴いて「次はバランスだね...」。こんな感じでアバウト、緩(ゆる)い。低音の量感、密度感も「ギリギリまで追っている」ので「アンプでドライブされるウーハーの空気を動かす力が足りない」と聴こえると、感じると「低音が空振りしているね」と表現……。なんと感覚的な評価。開発者には以心伝心(いしんでんしん)、阿吽(あうん)の呼吸でなんとなく分かるみたいです。

ピアノトリオの永遠の名作。付け加える事は無いこれがアキュフェーズの音に影響を与えるCD⁉(笑)。笑ってはいけません。

SN向上とダンピングの強化の二つの技術。これを極める事が「アキュフェーズの音だ」と言い切り、電子ボリューム・コントロールAAVA(Accuphase Analog Vari-gain Amplifier)で二つのビッグウェーブをもたらしたアキュフェーズの音。精度の高い音に加え音楽の躍動感をもたらした技術。継続的な回路設計技術の改善と半導体部品の取捨選択の繰り返し回路、部品を筐体(きょうたい)に収める実装技術の拡充。「今の音造りは、出ている躍動感に演奏者の息づかい、緊張感など音にならない部分を音に創り出す」ことを目指していると猪熊常務。それらの要素を試聴で判断する音源。「余程の凄い音源かな?」と思いつつ話しを聞いていた。猪熊常務、ここで一曲と…。そして取り出したレコードはアレ。「…ん、ん、ん。今時、それなの?」。ターンテーブルにニッコニコしながらレコードを載せる猪熊常務。「(私には)世界で一番、機器の違いが分かりやすい(のです)。低音の出方、ライブ感、レイ・ブラウンのベース。(そのベースを弾く)弓の向きを変える腕、指の動き」。猪熊常務にとってこのレコードはそれらの要素を音から判断できるところが良いと言う。「古い録音でも新しい技術で音が動きだす。(活動的な)ウォーキンベースや(上下二つのシンバルの音が上下してささやくような音の)ハイファット。現代は(技術の進歩があり)表現が『ハッキリ』した(と聴こえて来た)」と語り、普段はレコードではなくCDで音質判断。試聴のリファレンスという事でCD盤の話も付け加える。「ベースの低音の音が盤により違います。違いがあると困ります。(一番)古い盤が聴き慣れてます。試聴に使うと(手垢などで音がどうしても)劣化します。そのため、一番古い(CD)盤がオークションサイトに出たら確保するようにしています」との事。

これらの努力は、あくまで創業者の一人、春日二郎の理念、「正しい音を探す」を具体化するための一環。語る時、眼をギラつかせず、言葉に力を入れる訳でもなく普通の口調で「アキュフェーズの音は技術の延長上にあります。そして、まだまだ、やることがあります」と猪熊常務。これからの音質改善に自信を覗かせる。そして、「(今の音の)その上の音がある」とニコリとする。

アキュフェーズ。常にオーディオの音の大海原に身を委ねている。次のビッグウェーブを捉えようと虎視眈々(こしたんたん)とし、刻苦勉励(こっくべんれい)を顧みず、不撓不屈(ふとうふくつ)の魂で、一意専心(いちいせんしん)を忘れず、粉骨砕身(ふんこつさいしん)の気構えで、日々、切磋琢磨(せっさたくま)している(と思う)。切磋琢磨する点が一番いい。

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「プリーズ・リクエスト」。このレコード、過去、ブログで取り上げた。参考までに。『オーディオ・ベースマン見たり聴いたり プリーズ・リクエスト・・あれれ、ピアノの音が変!?。2017/12/27』。その中の一節。

...僕は訊ねた。このレコードの価値は、どこにあるのでしょうか?。ベーシスト・細川茂雄は、3点理由を挙げました。①曲がみじかい。②メロディが綺麗で、無駄(な曲)がない。そして、③レイ・ブラウンの上下のベースラインが素晴らしい。「レイ・ブラウンの音の選び方、(演奏中に)アレンジしている。完璧です。即興で弾いている。(オスカーの)裏でメロディを弾いている。ひとつも間違った音がない!」。では、このLP、「ベースを聴くLPですね?」。「そうです!!」