オーディオ・ベースマン 見たり聴いたり タンノイ・スターリング プレステージSE・・二つの音色を持って・・

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タンノイ・スターリング prestige SE。委託販売品。全オーナーは、プリメインアンプにE-550を使用してました。アンプも委託販売。

タンノイ・スターリング prestige SE。このスピーカーは、二つ音色を持っている。一つは古色蒼然とした過去の音。もう一つは解像度に優れた現代的な音。スピーカーの位置で音が変わる。

右の写真のスピーカーの位置。この景色に見覚えのある方は、お年を召したオーディオマニア。センターにアンプ、それに接するように両脇にスピーカー。そう、これは、オーディオ全盛期の頃、ラック・ステレオ一体型もしくは、誰もがこの配置が常識と疑わず、セットした状態。

40年ほど前の音(写真)は、中間帯域が厚く、チェロ、ビオラ、ヴァイオリンといった弦楽器の音が一体となって出てくる。ふくよかさ、柔らかさといった安心感はあるものの、混然とした印象は拭えない。少々、音楽の背景が混濁して澄み切らず、音のメリハリも甘い。中低域が張り出した固有のキャラクターがある。ただ、これが、ダメな音とするのは些か早計であろう。この音調がタンノイらしいといえばそうだと思う。

一方、常連の八重樫さんがセッティング、スピーカーの位置を変えると個性は一変する。中低域から中高域までの解像度、SN比は飛躍的に向上、音場は広がり、音の立ち上がりも鋭くなる。陰影表現も深まり、現代的な高解像度、高SN比のスピーカーへと変貌を遂げる。タンノイの音に感じる「もっさり」とした印象は打ち消され、タンノイも現代のスピーカーであることを再認識させられる。

シベリウスのヴァイオリン協奏曲を諏訪内晶子さん演奏で聴いた。古いスピーカーの位置では、諏訪内さんのヴァイオリンの音が、暖かな日差しの中、雪解けの大地から若葉が顔をのぞかせたかのように、人にやさしい。一方、現代的な位置では、周りは、フィンランドの凛冽なフィヨルド。人間の感情、感傷など一切排除、ただ静寂があるだけの自然の神秘を聴かせる。

ベースマンで体感できます!。

スピーカーを自家薬籠中の物にして活殺自在に使いたい方の入門品としてお勧め。