オーディオ・ベースマン見たり聴いたり 2025 東京インターナショナルオーディオショウ その② 今井商事・ブース・・「三丁目の夕日」を感じさせる。
- 2025.10.20
- オーディオ

「ああ、ホッとするなぁ」。東京インターナショナルオーディオショウ。異世界を感じるブースが毎年現れる。今井商事のブースがそれである。そのブースの音の印象は「昭和レトロ」。それを通り越して、「大正ロマン」まで感じさせる。今井商事のブース。階の隅にひっそりとあれば、納得するのだが(個人の感想です)、堂々と、競うようにハイエンド・オーディオを鳴らしているメーカー、商社と同じ階。そのうえ、エレベーターから近い、良い場所に陣取っている。アキュフェーズ・ブースの音質が、オーディオ正統派・劇画調・ストロング・スタイルなら今井商事のブースの音質は、漫画・コミック・スタイル?。笑いを、いや、安心感、なつかしさを感じさせる音。今回は、6階。隣がピエガ、オクターブのフューレンコーディネートで同フロアにはエソテリックが、ヤマハが陣を構えていた。ウーン。
室内は、アイキャッチ画像をみてもわかる通り至極アッサリしたもの。音響設備、オーディオアクセサリーなど丸っきし置いてない。拍子抜けする。試聴と言うと居並ぶ高額機器群を前にして「椅子に座り、眦(まなじり)を吊り上げ、腕を組みスピーカー(SP)を睨みつける。もしくは、耳を聳(そばだ)て頭を垂れ、音を聴き洩らすまいと目をつぶって耳をツィーターの位置に合わせる」となってしまう。が、そんな神経質な事しなくとも、緊張しなくとも良いブース。置いてあるSPは、ヤーン(JERN)と巨大な木製筐体のヴァイタボックス(VITAVOX)の二機種のみ。入室したら、ヴァイタボックスが木の筐体を震わせつつ朗々と鳴っていた。郷愁を感じさせる蓄音機の音質。音源は、レコード、CDといったものでなくネットワークプレイヤーを介して再生信号をSPに送り込んでいた。センターのアンプは、メーカー名不明。音の質感・密度感はB&W801D4 Signatureより良いが、如何せんレスポンスが遅すぎる。音に鮮度はない。再生される音源も過去のもの。刺激が少なすぎ。アキュフェーズ・ブースで凝り固まった体を整えるには、最適な空間だ。ざっくり音楽を聴こう。ヤーンの再生が始まる時を楽しみに待っていたが、その気配がまるでなかった。全ての意味で部屋の雰囲気が、黄昏(たそがれ)、昭和レトロ過ぎて、係員さん(⁉)に「SPを変えてくれませんか?」と最後まで言い出せなかった。
ステレオだけが置いてあるブース。訪れた者が、老人なら家の中に家電製品など少なかった昭和30年代を思い起こさせ、若者だったらその時代に思いを巡らさせる。ゴリゴリのオーディオマニアは、このブースは素通り。オーディオ機器でなくちゃぶ台と駄菓子でも置いて欲しい今井商事のブース。来年もまた訪問しよう…。
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ヤーンのSP紹介資料から一部抜粋して引用したい文言があった。引用させて頂きます。「~『音離れ』『解像度』『ステレオイメージ』といった要素は従来型のスピーカーとは別次元の領域にあります。オーディオでは「何も足さない、何も引かない」原音に忠実といった宣伝文句が過去多く使われてきました。一歩立ち止まって、それらに疑問を呈したい、そんな世界が広がります。『新鉄器時代』の到来です」。